先ずは酔いつぶすところから始めようか - 2/2

最近の私は自分でも分かるくらい荒れに荒れていた。仕事や会話をするときもいつもより少し乱暴だった自覚はあるし、何をするにも気が入っていない事にも気づいている。
そんなある日の仕事終わり、見かねた松田くんや萩原くんが気を効かせて飲みに誘ってくれたのにそれに応じる気分にもなれず、彼らに申し訳ないなぁと思いつつも断って、帰路についていた時。
「……あれ、景光?」
ここずっと連絡が取れていなかった幼馴染と偶然再会した。

***

「ん〜、美味しい……っ!」
「それはよかった」
私の言葉に目の前の幼馴染——諸伏景光がふっと目を細める。
あの後、『久しぶりに話さないか?』と景光から提案され、それに快く応じた私は彼に連れられ個室のバーに来ていた。
バーといってもよくドラマとかで見るダンディな雰囲気というよりは、少しお洒落な喫茶店の雰囲気に近いお店で、想像とちょっと違うなと密かにあの空間に憧れを持っていた私は心の中で少し残念がったのだがカクテルのメニュ表を見た瞬間、その気持ちは吹っ飛んだ。
メニューにはよく松田くんたちと行く居酒屋にはない、しかしよく聞くカクテルの名前がズラリと並んでいて、それだけで心が弾んでしまう。だってギムレットとかマティーニとかそんなのアニメとかでしか聞いた事ないもの!XYZなんてシティハ○ターだよ、シ○ィハンター!!
そんな私が一番初めに選んだのは『ゴッド・ファーザー』だ。それをオーダーしたとき景光が何故か「え」って声を上げていたけれど、選んだ理由は名前でしかないのでそんな深い意味はない。ちなみに景光は『バーボン・バック』というものを頼んでいた。バーボンって確かウイスキーの名前だったよなぁってぼんやりと考えながらそれを口に持っていく景光の仕草をじっと見る。
流れるような所作で、グラスを口へと運ぶ彼は暫く見ないうちに見惚れてしまうほど様になっていた。元々カッコ良かった顔は髭を生やし出したことと人生経験を積んだことから男性らしさが滲み出てきているし、グラスを持つ手だけで色気を感じてしまう。
……うん、きっと雰囲気に呑まれているからいつもよりそういうことを考えてしまっているんだろうなって自覚はある。そうでなかったらこんな、幼馴染に見惚れるなんてことはしないはずだ。
気持ちを戻そうと景光セレクトのツマミの一つである、カプレーゼに手を伸ばす。こんなお洒落なもの普段食べないなぁとか思って少し悲しくなったけれど、こういうものはこういう然るべき場所で食べるからお洒落なんだろうなって思い直す事にした。
「で、お前なんかあったのか?」
「色々とあったのよ……」
景光の言葉で現実に引き戻される。そう、色々とあったのだ。それはもうこれほどまでに重なるかな?ってくらいには様々なものが。
「ふーん?」
「……そんな顔されても。面白くない話を淡々と聞くだけになっちゃうよ?」
ニヤニヤと、でも心配そうな、それでいてやっぱり興味津々な顔を向けられる。
その表情は昔から変わらないはずなのに、色っぽく見えてしまう私はやっぱり重症なんだろう。
——まぁ、景光なら話しても問題ないかな……。
誰にも話していないし、彼は口外しないだろうし。それに話してみればこの荒れっぷりも収まってくれるかもしれない。
「まあまあ。カクテルのお代わりを頼んでからでいいから話してみなよ」
「むぅ……じゃあお言葉に甘えて」
こうして私は景光に流されるままここ最近の出来事を話す事になったのである。

***

一年付き合っていた彼氏にフラれた。
私の友人から『なんか、あんたの彼氏からアピールされてんだけれど。これ浮気じゃないの?』と送られてきたのが事の発端で、それに関して彼に問い詰めてみれば
「だってお前仕事仕事で俺の相手してくれないだろ。後職場の男たちと仲良くしすぎだし、俺も浮気していいだろ」
と悪びれもせず認めたのだ。
私の所属は機動隊の爆発物処理班で、男性隊員が多く私にも良くしてくれるのだが、私のことを恋愛感情で見ている人はいないし、どちらかといえば仲のいい同僚扱いである。松田くんと萩原くんだって一緒に飲みに行くことはあっても一対一はなるべく避けていたし、二人も察してくれていた。なのにそれを浮気と同義にされるのは堪ったもんじゃない。
しかも話はこれだけでは終わらず、彼はこれを機にと私への不平不満、更には悪口をツラツラと述べ出したのだ。
信じられなかった。素晴らしく良い性格をしているとか彼に思ったことはないけれど、それでも信頼はしていたし、時折告げられていた好意も本物だと信じて疑わなかったのに。それを全て裏切られた気がしたのだ。
そりゃ私だって人間だし、完璧なわけじゃない。不満もあるだろうし嫌だなって思うことだってあったかもしれない。けれどこんな言葉を吐かれるほどに私は酷いことをしたのだろうか?と思うと泣くに泣けないし、悔しくて堪らなかった。
「じゃあ貴方が今望んでいる言葉を言ってあげるわ。貴方と過ごした一年は楽しかったよ、ありがとう。そしてさようなら」
そのとき私に出来たのは、嫌味ったらしく満面の笑顔でそう言って去ることだけだった。その日の夜、缶ビール片手に酔った勢いで過去のチャット履歴から写真から何から何までデータを端末から抹消したのは良い思い出だ。

そしてまだ気持ちが落ち着くわけもない2日後、高校時の友人が急逝した。友人の母親が朝彼女を起こしに行った際にはもう亡くなっていたらしく、病気による死去だったらしい。最近まで連絡を取り合っていて亡くなる数日前にも一緒に喫茶店でお茶をした私は信じられない気持ちでいっぱいで、法事と葬式が終わって数日間は呆然とする時間が多かった。

更にその件から数日後。今度は職場で事件が起こった……事件を解決するのが私たちの職場ではあるんだけれど、そうではなくて、簡単に言えば職場の人間関係のいざこざに巻き込まれたのだ。
というのも、さっきも話に出てきた私の同僚である松田くんと萩原くんは顔がいいことで評判があり、しかも二人揃って性格も良く、爆発物処理班のWエースとも言われているほどの実力の持ち主で、それはそれは署内の女性に人気がある。ファンクラブって本当に存在するんだ……って少し引いてしまったけれど、そのようなものがあるくらいにはモテていた。
別に私は彼らに対して恋愛感情というものを持ち合わせていないので『どうぞ、勝手にやっていてください』というスタンスなのだが、彼女たちにとってはそうでもなかったらしい。昼休みに中庭にドナドナされたと思ったら
「貴方、あの二人のなんなの!?」
「邪魔なんだけれど!」
「あの二人に関わらないで!」
等々、フィクションの世界でよく聞くテンプレートじみた言葉を吐かれに吐かれたのだ。そもそもここに連れて来られている時点で昔からよくある『お前校舎裏に来いやオラァ』の一種ではあるんだけれど。
それにしてもこの人たちは一体何様のつもりなのだろう?アニメとかで見るたびに思っていたのだけれど、ファンクラブに所属しているから、片思いしているからってその人の交流関係とかに口出していい権利を所有しているつもりなのだろうか?
……まぁ、そういった感情と、彼氏にフラれた一件のイライラと、友人を亡くした悲しさが混じっていた私はこの時にはもう心が荒れ果てていたんだと思う。言い返すのも、言いくるめるのも、はたまた受け入れるのも面倒臭くて、やいやい言ってくる彼女たちの言葉を耳から耳へと綺麗さっぱり聞き流しながら、それでもこの状況はいただけないよなぁと冷静にスマホを取り出してこの現象を作り出している張本人たち(彼らは何も悪くないけれど)にここに来るようチャットを送った。
その間にも「何スマホ触ってんのよ!」とか言われたし、私の手から端末を奪われそうになったけれど、なんとかヒラリと免れる。すると一連の私の行動に腹が立ったのか、その女性が私に拳を振り上げてきた。
「……はぁ」
現役警察官よ、それをしていい行為かどうか理解しているでしょうに。ここで正当防衛を発揮するのもいいかもしれないが、私の味方がここにいないし、後で面倒なことに……もうなってるけれど……なるくらいなら大人しく殴られておくかぁと冷めた目で見た時。
「おい、何してんだ」
さっきチャットで連絡した片割れの声が聞こえて、私は再度溜め息を吐くのだった。

***

「なんだその数週間。濃すぎないか?」
「えーえー、本当にね。最初と最後の二件に関しては本当にどうかと思うよ私も」
何杯目かのグラスを空にして机にうつ伏せる。友人の件はすごく悲しかった。今でもまだどこかで生きてるんじゃないかなって思えるほどに。でも納得はしている分まだダメージは少ない。きっとこれからゆっくりと悲しい気持ちを消化していくものだと私は考えているし。
でも元彼の件と彼らのファンクラブの件はモヤモヤする。納得も理解も私が出来ていないだけかもしれない。それでも一方的に悪口を言われたり、暴力を振るわれたりする謂れはないだろう。
「大体私何も悪くない!?どうしろって言うのよおお……」
「おーおー、荒れてんなぁ」
「荒れたくもなるって。そりゃこのままじゃダメだって分かってるけれどさぁ……」
仕事や趣味や家事に身が入らないのはよくないし、そもそも対人関係が少し乱暴になっている自覚があるのは相当やばい。どうにか修復するべき問題だ。
「ほれ、次頼むだろ?」
「う〜……」
スッと目の前にカクテルメニューを差し出され、それを受け取る。でもここまでで名前に惹かれたものはあらかた制覇してしまった。
「景光、何かおすすめある?」
「あーそうだなぁ……」
顎に手を当てて考える景光。その表情はやっぱり絵になる程かっこよくて。
「いいなぁ……」
「ん?何が?」
「いーや。景光みたいなカッコよくて性格も良い人だったら悪口を言ってくることもないだろうし裏切ってくることもないんだろうなって思って。それに何かあったら無条件で助けてくれそうだし、私が悲しんでいたら抱きしめてくれたりして慰めてくれるのかなぁ」
「…………」
そうだ、彼みたいな人と付き合ったら元彼のように浮気をしたり悪口や不平不満を一気にぶちまけてくるようなことはしないだろう。
どうしようもない悲しさを覚えている時に傍に誰かいてくれるだけで心は救われるし、理不尽な理由で囲われたりした時にもTPOによるが比較的助けを求めやすいし。
……ああ、これが俗に言うスパダリか。
「あはは、私にもそんな人がいたら良いのになぁ……」
なんて、そんな贅沢な独りよがりの望みを持つだけ無駄なんだけれど。
「……そうか」
景光は私を見て頭を撫でると、おすすめのカクテルをオーダーしてくれた。なんだかカクテルっぽくないなぁって名前。どちらかというと。
「ワンワン?」
「ワンワンってお前な……。『ブルドッグ』ってカクテルだ。美味いと思うぞ」
「犬種の名前がついているお酒もあるんだね」
それはちょっと意外かもしれない。でもこういうものは色んなところから名前を拝借するものなのかなって思うとちょっと面白い。

この時。景光がどういう表情をしていたのか、そしてブルドッグのカクテル言葉を知らなかった私の記憶はプツリと電源が切れたかのように途切れた——

***

知らない場所で、ふわふわのベッドに横になっている。
意識がはっきりした時、私はそんな状況に陥っていた。
「……え」
頭がぼーっとして今の状態を処理しきれない。ブルドッグを景光が頼んで、それで……どうしたんだっけ?
起き上がろうとしたものの身体が重くて断念する。代わりに頭を動かして部屋を見回してみた。
どうやら私の寝かされているベッドはダブルベッドらしい。もしかしたらキングかもしれないけれど少なくともシングルでないことは確かだ。
ベッド脇の机には水のペットボトルが2本。両方とも半分以上減っているそれは酔いを覚ますためのものだろうか。そしてそのペットボトルの横には開封されている見覚えのあるものが3つほど。それは所謂避妊具ってやつで……
「って待って!?」
身体のだるさなど関係ない!とばかりにガバリと起き上がる。そして布団が剥がれた自分の身体を見て愕然とした。
「…………」
声が出ない。口をパクパクするので精一杯だ。
なんで、なんで私は一糸纏わぬ姿で寝ているの!?
もはやパニックである。頭はフラフラするし、ちょっと吐き気がするし……ってこれは多分カクテルの飲み過ぎからくるものだけれど!!
そういえばカクテルって度数高かったっけ、私お酒弱いのにどうしてあんなにガバガバと飲んじゃったんだろう。
数時間前の自分を殴りたい。景光の勧め方が絶妙に上手かったから乗せられてしまったとはいえ、潰れるまで飲んじゃうなんて……!
いや、そもそも景光はどこ行った!?
そう考えた時、タイミングよく扉が開いて
「お、起きたか」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
案の定というべきか、一糸纏わぬ姿の景光が部屋に入ってきた。
「なんだ、今更恥ずかしがることないだろ?」
「あ……あ……」
すごい逞しい体してるなぁ。流石警察官。どこに配属されたか知らないけれど……。
じゃ、なくて!!
「あの、景光さん?」
「ん、なんだ?」
「…………何があったか、教えてもらってもいいですか?」
甘んじて現実を受けいれようではないか、私よ……。
景光はそうだなと頷き、よいしょと私の隣に座ってくる。
……わざわざベッドの中に入ってきてまで。
「って景光さん!?」
「いいだろ別に。服着てないから寒いんだよ」
「服着ればいいと思うよ!?後私の服は……」
「洗濯中」
「……あー」
なんだろう、察した。察したくなかったけれど察した。
これは大人しく景光の話を聞くしかないだろう。腰に腕を回されているのとか、そういうのはなんとか頑張ってスルーして今は状況判断に専念するんだ私!
「まずあの後、酔い潰れた君と一緒にここまで来て、休むことにしたんだ。家に帰せるほどの状態じゃなかったし、落ち着くまではと思ってね。覚えてる?」
「いえ全く……」
「じゃあもうこの時点で記憶は飛んでるのか。返事は普通にしていたし、千鳥足ではあったけれど歩けてはいたから意識はあったみたいだけれど」
意識あったのかよ私!!でも千鳥足じゃ家に帰すのは躊躇うかぁ……や、ホテルに一緒に入る方が躊躇う気がするんだけれど。
「それで部屋入った瞬間、トイレに駆け込んで一気に吐いたんだよね。その時に服も台無しにして」
「やっぱりかぁ!!」
服を洗濯という時点でここは想定していた。本当どんだけ飲んだんだ私。何してるんだいい歳して。
「ごめん、景光……後始末させちゃって」
幼馴染にとんでもないことさせてるよ……申し訳ないよ……。
でも彼はニコッと笑って「そんなの全然いいよ」って。神様かな?
「で、まぁそこからは君の承諾の元やることをやったら意識を手放しちゃったから少し寝顔を堪能してたってところかな」
「………」
今、なんて?
「『抱いていいか?』って聞いたら『いいよ』って可愛い声で言ってくれるんだもんなぁ。嬉しかったよオレ」
「………………」
なんだろう、ちょっと理解できないんだけれど。景光ってば英語話してる?
「ずっと好きだった女の子を前に我慢してた甲斐があったよ」
「わあああああああああ!ストップ!ストーーップ!!」
ダメだ、限界。
何がって?現実逃避しようと頑張っていたのに耳元で囁かれてみてよ!無理だよ!降参だよ!!
「景光さん、本気ですか?」
「ああ、本気も本気だぞ」
「ですよね……っ!」
そんなの彼の顔を見れば一目瞭然だ。優しげな表情を浮かべているのに、もう逃さないという猟師のような雄の視線を向けられてしまえば信じるしかない。ロミオトラップ?その可能性は考えないものとする。そもそも私にそれを仕掛ける理由は彼にないはずだ。
思わず顔を覆ってしまう。確かに、確かに景光みたいな人が傍にいてくれたらって考えたよ!?いいなぁって思ったさ!
でも誰が!こうなると!思った!!
「やっぱり気づいてなかったか……。オレ結構アピールしていたつもりだったんだけれどな」
「気づいてないです……どこら辺ですか?」
「最後に頼んだカクテルの名前は?」
それは覚えている。犬種の名前がついてるなんてって妙に印象的だったし。
「えっと……『ブルドッグ』だよね。それがどうかしたの?」
「そう、そのブルドッグのカクテル言葉を後で調べてみてよ」
「う、うん?」
なんだろう、何か意味深なことを含ませていたんだろうか。
そもそもカクテル言葉詳しくないからそんなことされても気づくわけがないんだけれど……。

「それで」
ギシッとベッドが鳴く。
「へ」
あっという間に私の手首を掴んで頭上に縫い付け、押し倒してくる景光……ん?私、押し倒されて……!?
「ひ、ひひひひ、ひろみっん……!」
言葉を遮るように唇が重なる。長くて息苦しくなるはずのそれは、でもどこか心地よくて嫌じゃない。
やがてそれが離れても銀の糸で唇同士がくっついているのが見えた。
「ひ、景光……」
視線が外せない。ギラギラとしている彼のその目がかっこよくて、飲まれてしまいそうで。
ごくりと喉が鳴った。それが合図かのように景光が口を開いた。

——今からどうしようか、と。

***

翌日。
「うう……」
「お前、何してんだ……?」
私はデスクにうつ伏せて唸っていた。原因は言うまでも無く。
「二日酔いです……」
「本当に何してんだ?」
すごい呆れた声が頭上から降ってくる。そりゃそうだよね、私もそう思うよ松田くん。
「カクテルが美味しくて、つい飲んじゃった」
「だからって限度があるだろうが」
「反省してる」
「後悔は?」
「……半分してない」
「おい」
だってカクテルは美味しかったし、晴れて彼氏が出来たわけだし。
「へへ」
そっか、彼氏になったんだ、幼馴染の景光が。なんだか夢みたいな話だ。
「ほら、これ飲んだら少しはマシになるんじゃない?」
コツンと頭に何かをぶつけられる。顔を上げて萩原くんからそれを受け取ると、そこには『しじみの味噌汁』があった。流石萩原くん。
「ありがと、相変わらず気遣いがすごいなぁ萩原くん」
「でしょ〜?」
これはモテるのが分かる気がする。
「んで、昨日は誰と飲みに行ったの?」
「あー……」
そういえば昨日は二人の飲みのお誘いを断ったんだったっけ。そりゃ気になるよね……。
でも景光は連絡を断っているくらいだし、名前を出さない方がいいか。二人とも仲良いとはいえ。
「幼馴染と偶然会ったからそのまま飲みに行ったんだよね」
「……まさかと思うが、その幼馴染って男か?」
「え、うん。そうだけれど」
ん?なんで顔を顰めているのだろうか二人とも?
「大丈夫?変なことされなかった?」
——ゲッ。
「大丈夫!そんなことは全然なかったよ!」
断じてあんなことやこんなことやそんなことはありませんでしたとも!ええ!!
……ってことにしておかないと、なんか後々面倒臭いことになりそうだからシラを貫こう、そうしよう。
「それならよかったけれど。でも易々と男の前で酔い潰れちゃダメだからね!」
「はーい……」
萩原くんの言う通り、それは本当に気をつけようと私は再度決意するのだった。

もちろん、松田くんと萩原くんがコソコソっと「あいつ、とうとう手を出したか」とか「まぁでも元気になってよかったよね〜」とか言っていたのは私の耳に入ってくる事はなかった——。

 

◆酔い潰れた夢主
数週間の内にメンタルズダボロになって荒れていた人。カクテル美味しい〜!と勧められるがままに飲んでいたら酔い潰れた。
あの後結局泊まりになって、朝は景光に送ってもらうことに。
景光のことを人間として好きだった。飲んでいる間に恋愛感情も芽生えていたので、まさか付き合えるとは……とびっくりしている。

◆酔いつぶさせた幼馴染
元々夢主のことが大好きだった。連絡を断たないといけなくなったのは心苦しかったが、盗聴器を仕掛けることで我慢していた。元彼と付き合いだした時は相当荒れていた模様(降谷談)でもいつかは手に入れると決意していた。
元彼と別れて、そこからも色々と不運が重なった彼女をこれ幸いと偶然を装って迎えに行き、お酒で潰した後ホテルに誘導する。ちゃんと承諾は取ったから犯罪じゃないよな?

◆夢主の同僚二人
荒れている夢主を心配していた。
翌日、二日酔いになりつつも笑顔を絶やしていない彼女を見て、元気になってよかったと心から安心する。いい仲間であり同僚である。
何もなかったというのが嘘だと言うことに薄々気がついているし、相手が誰かももう分かっている。バレないと思ったか諸伏。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です